胃液が上がりそうになりながら、僕はなんとか呼吸を整える。

俯いて、苦しさから固く閉じていた目を開けると、凍傷だらけだったはずの僕の腕が見えた。

今は、傷ひとつ無く元通りになっている。

何度か深呼吸を繰り返しながら、僕は無言で大悪魔を睨んだ。

『なんだその目は。私は傷を治してやっただけではないか』

僕の反抗的な目に、大悪魔は冷ややかに話す。

『第一、悪魔が首を絞められたくらいで、死ぬわけないだろう』

『いや、貴方なら出来る筈だ。僕みたいな力の弱い悪魔から命を奪うくらい、簡単な筈なんだ』

なんで僕を殺さない?

なんで僕から、命を奪わないんだ。

『僕はもう…貴方のおもちゃにされるなんて…嫌なんだよ』

大悪魔に弱い部分など見せたくは無かったが、あまりの惨めさから、僕の目からは、勝手に涙が溢れだしていた。