不思議な感覚だった。

一秒ごとに、目の前が白くなって行く。

苦しさは無く、聞こえるのは、僕の心臓の音だけ。

その間隔も、徐々にゆっくりになっていき、その音は僕には心地よく聞こえた。


あと少し…

あと少しで、この音も止まる。

僕は、開放され、また生まれ変わるだろう。

僕の仕事も、大悪魔から下された使命も、アリスのことも、全て忘れて、また一から人間として、僕は生まれ変わる。

僕は、生まれ変われる。

アリスと同じ、人間として…



『…愚かだな』


大悪魔が呟き、ふいに手を放した。

いきなり入って来た空気に、僕の内臓は驚き、僕は激しくせき込む。