「だんだんエスカレートしていって。
お兄ちゃんがいる日は、大地の家に
いたの。隣の家で、幼馴染だから。」
大地という言葉がでた途端、朱雀さんの体がピクッとはねた。
「おばさんも優しくて。
いつでもいらっしゃいって言って
くれたの。だから、私もおばさん
の子供みたいに大地の家にいたの。
そのうち大地と付き合うように
なってね。私は変に言えば家を
離れたの。お兄ちゃんは止めも
しなかった。」
朱雀さんの香りが、私の涙を抑えていた。
「お兄ちゃんも大学に入って。
お父さん譲りの賢い頭で国の
外交官になったの。家にも帰って
こなくなったから、私はまた、
家に戻ったの。つい昨日まで、一回
も帰ってこなかったから、もう帰って
こないかと思ってた。でも…」
私は顔を埋め、小さな声で言った。
「昨日は…帰ってきた…。」
朱雀さんはそれで全てを察してくれ、私を強く強く、今までで一番強く抱きしめた。