「日菜?泣いているの?」



頭の上から千波くんの声がして、私はびっくりして顔を上げた。



目の前に千波くんが立っていて小首を傾けて見ていた。



「やっぱり、泣いているんだ どうしたの?何かあったの?」



千波くんは私の顔を見ると、腰を屈めて私と同じ目線になるように腰を落とす。



そして、制服のポケットからスポーツブランドのマークの入ったハンカチを出すと、頬に伝わる涙を優しく拭いてくれる。



私は答えられなかった。



「日菜?」



もう一度、優しく呼ばれる。