サンダルをつっかけて、ブランコにもう一度座わり、他の場所に視線を反らす。



ちょうど目線の先にベンチがあって、千波くんと彼女がそこに座っているせいだ。



視線を反らしているのも疲れるから、うつむいてブランコをゆっくり漕いでいると、女の子の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。



楽しそうだな……。



私は薄暗くなっていく空とともに、気分までもが暗くなっていく。



ここに来なければ良かった……彼女を連れている千波くんを見たくなかった。



カッコよくて、お勉強もスポーツも出来る千波くんは人気者だった。



中学校では「若様」と言われているって郁斗が言ってたな。



意味が分からないけれど、サラサラの髪に優しい微笑みを見ていると、納得してしまう。



私が千波くんを意識し始めたのはいつからだったっけ?