「ママさん、心配しているよ?もう帰らないとね」



そっと私の腕をつかんで、千波くんは立たせてくれた。



「そのサンダル、日菜のじゃないでしょ?何かあった?」



大人のサンダルを見て千波くんが言う。



「……おけいこが嫌で出て来ちゃったの……」



「そんなことだと思ったよ」



引きずるような、ぎこちなく歩く私の手を握って、同じ歩調で歩いてくれる。



「……ママが言うように出来なかったの、うまくなりたいのに……出来なくて……」



「日菜なら出来る うまくなりたいって思えば出来るよ 日菜、だから逃げ出しちゃダメだよ?」



優しい微笑み。



「千波くん……」