「慎ちゃんのこと知りたくて、中学時代から調べてたんだ。あの試合で好きになっちゃったから…」

ハッキリ好きと言われると、どう返して良いのかわからないけど、俺も好きになっていた。

「バスケ…無理かなあ?それとも…私邪魔かなあ?」

どこまで本気にして良いかわからなくて気持ちだけが昴ぶった。

「もう少し考えさせて」

それしか言えなかった。



―6―
毎日俊哉に急かされまくっているが、今一歩踏み出せない。

今日も急っ突かれていると、またあの男と小森が口論していた。

「あの二人、まだ切れてなかったんだな」

俊哉が呟いた。

「知ってるのか?二人とも」

「あの先輩も高嶺中だからな。気になるのか?」

「まあな…」

「あの先輩は、手当たり次第にちょっかい出すので有名でさ。色んな女をつまみ食いしてたよ。小森と付き合うようになって、一時は落ち着いて見えたんだけど、またすぐにつまみ食いだよ。最低な男だよ」

小森もつらい恋愛してんだな…。

放課後に寺地先生に捕まり、強引に見学させられた。

コートには小森の姿が無かったが、遅れて姿を現した時には、目を真っ赤に腫らしていた。

気になって仕方なかったが、この場で聞くわけにもいかなかった。

小森からこっちを見てきて目が合ったが、すぐに視線を逸らされた。

途中で見学を切り上げて、帰宅しようとした時、男女の会話を立ち聞きした。

「あいつから近付いて来たくせに、好きな人が出来たなんて言いやがって、頭きたからちょっとお仕置してやったよ」

「マジー?何したの?」

「無理矢理キスして、体に落書きしてやったよ。写メ撮ってさあー」

俺は怒りに任せて飛び出した。

こちらを振り返った瞬間に、バッシュの底で顔面を蹴った。

手から落ちた携帯も踏んづけた。

腹を踏み付け、上から見下ろした。

「28cmのバッシュで顔面蹴られた感想は?」

携帯カメラで写してやった。

「今度里織に近付いたら陸上用のスパイクで踏むぞ?」