誰もあたしのことを知らないところに行きたかったの。


――あたしとあっくんのことを知っている友達は、彼が亡くなってからあたしに本音を言わなくなった。



気を使ってくれてたんだと思う。


だけどそれは逆にあたしを苦しめた。



『ねえ聞いて!あたし…好きな人ができた!』


『ちょっ、マイ!結衣の前でコイバナはしちゃ駄目だって言ったでしょ?』




あたしの前でコイバナはしない。


野球の話はしない。


男の話はしない。



あっくんを連想させる話をしない、それがあたしの知らないところで決まったルール。