そして、直斗は。

 いつも土曜日の朝、七時四十分に僕のベッドへ、やってくる。

 僕とハニーの愛の巣に、土足で上がり込んだかと思うと、今日も元気に、叫んだ。

「お早よっ! 螢!
 いつまでも、ぐ~~すか眠てんじゃねぇよ!」

「だ~~
 直斗、うるせ~~!」

 そんな僕の叫びを、直斗は丸々無視しやがると。


 とうっ!


 と、言うかけ声も高らかに、助走をつけて飛び上がり。

 ベッドでへばっている、僕に向かって、ダイビングして来やがった。

 そして、文字通り僕のカラダの上に飛び乗ったかと思うと。

 僕のくるまっている、上掛け布団を引き剥がしにかかろうとしたんだけども……

 ……

 ……今日に限って直斗は、さっさと僕の上から降ろされて、ベットの隅に追いやられた。

 なぜなら。

「おぁ!
 今日は、ハインリヒがいる~~!」

 まるで、化け物にでも出会ったような言い草で指をさす直斗に、ハニーのキレイな眉間に深々とシワが寄った。

「私がいたら何か、マズイのか?」

 一気に不機嫌になったハニーに、直斗が可笑しそうに、けたけたと笑った。

「うん!
 だって、俺!
 今日は螢とデートのつもりで来たんだもんっ!」

「ナニ! デートだと……!?
 螢は私のものだ!!」

 子供相手に本気なのか、どうなのか。

 ハニーは許さん~~とばかりに、ちょこまか動く直斗を捕まえようと躍起になった。

「……やめとけよ、ハニー。
 そいつは、めったに捕まんないから」

 あくびをかみ殺しつつ、布団から首だけ出して言った僕の言葉に、ハニーはぷう、と頬を膨らませた。

「しかし!
 直斗が君とデートだ、などと言うのだ!」

 エライ博士のくせに、まるで、ハニーの方が、子供みたいだ。

 じだんだを踏んで怒りだしかねないハニーに、僕は笑った。