午前中は、特に変わったことはなかった。


 そもそも。

 祭りの参加者とはいえ。

 この街の住人ではないトシキが。

 午前中から、舞台の裏仕事を手伝う義務は、無い。

 結花と里佳の姉妹と、俊介は、来てた。

 彼女たち二人は『調子を崩して』早めに帰った僕のことは、心配してくれたけれど。

 具体的に、トシキが、結花に何か言ったワケじゃないようで。

 どちらか、と言うと。

 直斗と俊介の言い争いの方が、気にかかるようだった。

 その、心配のタネも。

 再び会った時には。

 フーっと、縄張り争いをする時のネコみたいに、お互い、牽制しあってたものの。

 つかみあいみたいな元気良すぎる、暴力ざたにはならなかった。

 他の団体さんの本番の最中に、派手な喧嘩だけは、勘弁してほしかったから。

 目立ったことが無く、穏やかに本番が迎えられそうな気配に、僕は内心ほっとしていたのに。

『異変』は、舞台裏の仕事をしている僕の知らない、客席の辺りから。

 ぽつぽつと始まっているところに、僕はまだ気がついていなかっただけだった。