「俊介とも決着ついてねぇし」

「……会ってまた、喧嘩をするつもりなのか?」

 そもそも、今日、またいるとは限らないぞ、なんて。

 呆れた僕に、直斗はムキになって言った。

「螢が心配なんだって、何度言わせるんだよ!
 あんた、昨日、家に帰って来る時どんな表情(かお)してたと思って……!」

 ……相当ひどかったか?

 だけど、そんな顔を直斗にさせるワケには、行かないだろう?

 僕は、わざと、木で鼻をくくるような言い方をした。

「一晩寝たら、すっきりさっぱり」

「螢!」

「昨日のことは、どっちかって言うと『食あたり』に近かったんだ。
 僕の側についていても、オヤツはないぞ?」

「そんなモノのために、行くんじゃねぇや!」

 直斗は、全身トゲトゲしたハリネズミみたいにカラダを丸めて、抗議した。



 うう……一歩も引かないで、やんの。

 仕方ないヤツだな……

 結局。

 僕の。

 シェリーの。

 ハインリヒの言葉を突っぱねて。

 頑張る直斗に、大人の方が、折れる形になった。

 昼に、四人で待ち合わせて食べるまで。

 僕が、やったモノをその場で、飲み食いする以外、飲食禁止なのと。

 必ず僕の目の届く場所に、居ることを守れば、とりあえず大丈夫かな?

 と。

 それだけちゃんと、約束させて、あきらめた。


 ……なんて。

 やっぱり、僕は。

 事態を楽観的に見ていた。

 ……本当は、それどころでは、なかったのに。