ま、大丈夫じゃないか、と。
ずっと湯船でしゃべってて、湯あたり寸前の入浴後に、服を着る気にならず。
腰にパスタオルを巻いただけの。
上半身裸の肩をすくめた僕に、ハニーは、近づいた。
「……本当に大丈夫か?
もし、危険ならば……一歩も家から出て欲しくないのだ」
まるで、子供の独占欲を見ているような。
ハニーの言葉に、僕はちょっと笑った。
「ハニーは、心配症だな。
僕を家に閉じこめて、監禁する気?」
「……出来るモノなら、とっくにやってるさ」
言って、ハニーは、僕を正面から緩く抱きしめた。
すると、洗いたての石けんの匂いが、僕をふわり、と、おし包む。
「君を誰も知らない場所に閉じ込めて。
君の瞳に、私以外、誰も写したくない。
君の姿を、他の誰にも見せたくない……」
「ハニー」
冗談とも、本気ともつかないその声に、ハニーの顔を見上げれば。
愛しい彼が、困ったように微笑んだ。
「だけども私は。
君が自由を制限されるのが、嫌な事も知ってる。
せっかく色々と制限のある闇の……裏の世界から自由になったのに。
今度は『私』が君を捕らえてしまったら。
君が命がけで自由になった意味が無いじゃないか」
「ふふん。
だからハニーは、僕を自由にしてくれるって?
そんな格好いいこと言ってるけど、知ってるよ」
ハニーの鼻をつついて、僕は、笑った。
「あんたは、ただ。
僕が必ず自分の所に帰ってくる。
……って思っているからそんなこと言ってるんだろ?」
「……私はそんなに、思い上がってない。
だから、いつも朝に出かけるときは、どきどきだし。
帰ってくるときも、家に君が居なかったらどうしようかと、いつも心臓が痛い」
「……そんな、大げさな……」