「螢………」

 僕の言葉に、直斗は、本格的に泣いてしまうように。

 くしゃっと顔をゆがめた。

 昔は、欠片も無かった僕の『心』も。

 ハニーに愛情をたくさん貰って、大きく育ったから。

 直斗に、少し分けられるくらいには、余裕が出来たよ。

 だから。

「おいで?」

「………うん」

 直斗は頷くと。

 ようやく、両手を広げた僕の胸に飛び込んで来る。

 そんなアイツを、ぎゅっと抱きしめた。

 それでようやく、安心したようだった。

 直斗は、年相応な顔をして。

 ほっとため息をつくと。

 僕の腕の中で、少し、泣いた。













 そして、そんな直斗を、一瞬でも『可愛い』な、と思ってしまったのがいけなかった。

 腕の中にある、ぬくもりが。

 僕の抑えている欲望を呼び覚ます。


 そんな場合じゃなく。

 そもそも。

 直斗を欲望の解消相手にするなんて。



 ……考えたくもないのに。