スタジオの入口にもたれかかって、見た光景に。

 僕は、思わずつぶやいた。


「……うぁ……
 また、派手にやったな」



 そう。

 スタジオの隅では。

 練習を見たり、私物を置いたりするために出したパイプ椅子のほとんどが、見事にひっくり返り。

 上に置いてあった、化粧品やら飲み物やらが散乱していた。

 ほとんどが、そのまま、ビンが転がっているだけだったけれども。

 なかには、割れたり、蓋が開いたりして、床が粉や液体がこぼれていた。

 その現場を取り囲むように。

 トケが引っこんだ中央で、自主錬していたらしい。

 群舞担当のおばさん連中が集まって、がやがやとやっているのが見えた。

 そして、その騒ぎの中心に居るのは……

「ウチの直斗と……
 結花ん所の俊介……か……」

 どうやら、二人で喧嘩でもして、突き飛ばし合いでもしたのか。

 辺りに散乱している化粧品の粉とジュースででドロドロになっていた。

 小さくても、野郎の端くれらしく。

 どちらも、目をそらさず、睨みあっている姿は。

 二人とも、気の立っている山猫みたいだ。

 案外真剣そうな二人のその様子に、結花も、他のおばさん連中も、手が出せないらしい。

 ただ、ただ困ったように眺めていた。

 僕は、やれやれ、と肩をすくめ。

 まだ荒れている自身の熱を、昔、やってたように、意志の力で抑え込み、聞いた。



「……何の騒ぎだ?」



 そう、なるべく普段と変わらないように歩いて近づけば。

 ガキ二人が、僕に向かって、同時に顔を向けた。