最初の一音は、何を弾いたのかと、すごく不安だった。

 だけども、それが。

 予定通りの、フラメンコ。

 群舞のセビジャーナスの曲で。

 つかの間。

 心の中で、ほっとため息をついた、とたんだった。



 ……熱が上がますます上がって来る。

 まるで。

 酒を飲んで運動すると、酔いが急激に回っていくように。


 踊るにつれてカラダに心が、引き吊られてゆく。


 セビジャーナスもフラメンコである以上。

 踊り方はとても、自由で。

 踊りながら相手と、立ち位置を変える場面以外。

 あとは、ほとんど。

 心の赴くまま、自由でどんな振り付けにしてもいいし。

 そもそも、初心者の曲だから、アドリブもしやすい。

 だから。

 心が、身体が、変だと思うなら、いくらでも手を抜けるはずなのに。

 僕は、自分の奥底から湧き上がってくる熱に浮かされるまま。

 トシキの曲に導かれるままに、踊る。

 欲望にまみれた、情熱的な恋のダンスを止めることが出来無かった。



 ああ。

 なんて、キレイな里佳……!

 白く細い首筋に、口づけし。

 その、大きく柔らかそうな胸の感触を。

 この両手いっぱいに、楽しむことが、出来るのなら……!



 ……抱きたい。



 いや、もっと、正直に言うのなら。



 貪り。

 引き裂いて。

 里佳のカラダの隅々を、味わい尽くしたい………!



 強い、強い熱さに。

 全部で、四番まである曲の三番が終わるころには。

 自分が、どんな踊りをしているのか、良く判らなくなっていた。