心と、カラダのばらばらの。

 落ちつかない感覚が、まだ続き。

 とても不安だった。

 けれども、ここには、顔見知りのご近所さんが、山盛りのフラメンコのスタジオで。

 僕の、こんな気持ちと、状態を知られたくなかった。

 僕は、穏やかに微笑む余裕をなくして、無表情になる。



「……へええ。
 雪の王子が、降臨したじゃないか」

 くすくす……とささやき、忍び笑う声に、振り返れば。

 ギターを構えたトシキが、とても楽しそうに、僕を見ていた。

「色っぽいぜ?
 ぞくぞくするほどキレイだ。
 雪の王子!」

 トシキの声は、小さくても。

 僕の隣りにいる里佳には、丸聞こえで。

 彼女は、怪訝な声を出した。

「……雪の王子?」

「何でも無いよ。
 忘れて?」

 人の気も知らず。

 余計なことをべらべらと!

 睨む僕に、トシキは、ふふん、と笑ってギターを爪弾いた。