もちろん。

『椿姫』なんて、踊るか!

 莫迦たれ!

 だからと言って、このノリじゃ。

 そのまま、すたすたと歩いて来て終わり、じゃ、だれも許してくれるワケもなく。

 僕は、椿姫の曲とリズムをそのままに。

 全く違う踊りを踊りながら。

 トシキとフラメンコ仲間のところに近づいた。

 淫らな曲を聞きながら。

 知らん顔して、移動する。

 フラメンコのターン(回転)で、くるりくるくると、回って、トシキとみんなの間に滑り込んだ。

 そして、舞台の上で曲を要求する要領で。

 音高くパンパンと、手を鳴らし『椿姫』を強引に終わらせると。

 みんなに呼びかけた。


「うたた寝して、悪かったよ。
 でも、おかげで、もう僕は、大丈夫だから。
 みんなで、セビジャーナス、行こうか」

 僕の言葉に。

 仲間の踊り手たちは、ようやく夢から覚めた顔をした。

「そ、そうよね~~明日の練習しなくちゃ~~」

「ああ、そうだったっけ?
 早く、みんなの踊りも仕上げないと~~」

 と顔をみあわせ散って行く。

 トシキは、その様子を見てちぇ、と舌打ちして、肩をすくめた。

「これも、ダメか~~
 残念だな」

「ちっっとも残念じゃない!」

 全く!

 何考えてるんだよ!

 と。

 トシキに、ささやけば。

 ヤツは、すぃ、と目を細めた。



 どうやら、コイツは、また何か、やる気らしい。



 しつこいヤツ!