あんただったら、さぞかし。

 女の子がより取り見取りに手に入るんじゃないか?

 そう言うトシキに、僕は不機嫌に声をだした。

「……あんたと同じにするなよ。
 もう廃業した商売なんて引きずってないんだ。
 僕には、好きなヤツは、一人しかいないし、それで充分だと思ってる」

「たったひとりだけで、満足だって?
 キレイごとをぬかしてんじゃねぇよ。
 ……って、そうか。
 あんたの好みは、男だっけ?
 普通に女が好きな、ノンケなオレらよりは、だいぶ女寄りの考え方、してんのか?」

「……知らないよ!
 それに、ノンケの男だって、全員が全員あんたと同じ考えとは、限らないだろう!?」

 ……とは言ってはみたものの。

 本当は知ってる。

 僕が、ハニー一人だけを愛してて。

 他のヒトビトには絶対に、手を出さないことをおおっぴらに言い。

 実際に、外では色っぽい雰囲気を欠片も出さないから。

 ご近所のおばさん連中が僕を構ってくれることを。

 彼女達は、今。

 僕を『獣』ではなく。

『愛玩動物』だって思っているんだ。

 なんて、こと。

 そんな幸せな誤解が、つかの間の平安を生んでいることを。

 トシキは、意味深に目を細めた。

「お前は、もしかしたら。
 ただエロい『椿姫』を踊るよりも。
 あんたの正体が本当は『何か』が判るようなヤツをみんなの前で踊る方が、マズかったりして、な」

「……!」

「ガロティンは、本来『可愛い』感じのする曲なのに。
 あんたの女装は、妖艶(エロ)チックで、男バージョンは、攻撃的だ。
 ダンスは、踊り手の心をごまかさないぜ?」

 言って、トシキは、僕の頬を、ふ……と撫でた。

「キレイな外見のままに、女のふりをする『椿姫』じゃない。
 あんたが『男』であることを全面に出す『ファントム・ジ・オペラ』や創作の『Knigt of night』なんて踊りを発表した日には。
 あんたのお友達が、誰も居なくなったりして。
 だから『椿姫』辺りで勘弁してやろうっていうのに……!」

「トシキ!」