「悪かったな。
 男同士は、いくら頑張っても、子どもはできないよな。
 ……コイツが、その、一緒に駆け落ちした男?」

「……ん、なワケが、あるか!」

「でも、コイツ……あんた、守るんで必死じゃないか。
 ヒトを害虫みたいに見て……軽くウザいんだけど」

「直斗に何かしてみろ。
 許さないからな!」

 相手は子どもだ。

 冗談なんだろうが、半分本気みたいな言い草が気に食わない。

 憤慨して叫べば。

 トシキは、ちょっと困ったように、こめかみ辺りを人差し指で掻いた。

「……やれやれ。
 親子に揃って嫌われた気分だ。
 ……そんなつもりじゃなかったんだけどな」

 そう、トシキは、薄く笑った。

「……信じないかもしれないけど。
 オレ、例の披露宴で、あんたのステージ見て、ファンになったんだ」

「……は?」

 思いもよらない言葉に、僕が目を見開くと、トシキは、肩をすくめた。

「あんた余興で、何曲か踊ったろ?
 ……その中で、凄く気に入ったヤツがあるんだ。
 フラメンコ、一曲キャンセルして、それやんないか?」

 一生懸命、練習して弾けるようになったんだ。

 なんて、嬉しそうに言うトシキを僕は、胡散臭く見た。

「なんだよ、その曲は」

 一応は、聞いてやると促せば。

 トシキの瞳がキラッと輝いた。

「……椿姫」

「げっ」

 その言葉に、僕は、心底嫌な顔を作った。

 ………よりにもよって、何を言いやがるんだ!

 有名なオペラを『娼婦』の話って所を強調して、大分アレンジしたその曲は。

 僕が、ドレスを着て踊るんだ。