「オレ……あんたと前にどこかで、一回くらい会ったと思うんだけど……」

「さあ?
 僕は、初対面ですが……?」

 ……こんなヤツ!

 一度でも出会ったら、忘れるもんか!

 なんて。

 僕のココロの叫びが、届いたか、どうか。

 トシキは、僕の言葉に、うん、と素直に頷いた。

「オレもさすがに、姓と名前が逆転した揚句。
 横文字のミドルネームが入るような、派手な名前のヤツに会ったら、忘れないよな……
 あんた、日本人離れした、キレイな顔立ちしてるけど、どこの国のヒト?」

「僕は、日本人ですよ、生粋の。
 ただ……この前入籍した相手が、ドイツ人のクオーターで……」

 ……どうやら。

 トシキは、僕のことに、興味があるようだった。

 ヤツは、さりげなく放そうとした僕の握手の手を握り締めやがった。

 そして、改めて言葉を紡いだ。

「入籍って、結婚か!
 それは、おめでとう!
 だから、息子がいるのか……
 あんた。
 だいぶ若そうなのに、子どもの年齢がオレのガキとほぼ、一緒じゃないか?
 なかなか、やるな」

「だ~か~ら~~
 そいつは、僕の子じゃなく~~」

 だ~~

 ったく、コイツも僕の話を聞かねぇヤツだな!

『あんたの気持ちは、良く判る~~』

 なんて、良く判らないことを言いながら。

 トシキは、僕の手を離すと。

 機嫌よく、今度は、僕の背中をばしばし叩きやがった。

 本人に、悪気はなさそうなのは、判るけど。

 放っておくと、跡になりそうな攻撃に、閉口して、逃げながら、ふと、気づく。

 ……は?

『オレのガキ』って……?

 驚いて、辺りを見回せば。

 僕の視界から外れた、トシキの影から、直斗ぐらいの子供が、ひょこっと、顔を出した。