部屋では、クソ生意気な直斗も。

 祭りの会場では、年相応の、小さなガキに見えた。

 ご近所さんの輪の中から引っ張り出して、かき氷を買って戻れば。

 ケチャップのたっぷりかかった、フライドポテトと、緑色のりんご飴を両手に一杯抱え込み。

 産業祭の特別展示だそうな、バイクを見つめてた。

 都心からそう離れていないくせに。

 内陸には畑がひろがり。

 海沿いには、最先端技術の満載した工場群のある、アンバランスなこの街には、相応しい。

 如何にも、特撮ヒーローが乗って、走りそうな最新型のバイクだった。

 これは、よっぽど直斗の琴線に触れたらしい。

 きらきらしく光る目は、そこらへんにいる子供と変わらなかった。

 いつもは、大人のように、キレイにモノを食うクセに。

 バイクに気を取られて、ぼんやり、ぼ~~っと、自分の口に食い物を押し込むもんだから。

 僕が気がついた時には、直斗の口の周りと服は。

 ケチャップと、りんご飴の毒々しい色で染まって、とんでもないことになっていた。

「何やってんだ、直斗!?」

 僕に呼ばれて、ようやく直斗も自分の失敗に気がついたようだった。

「ごめん、螢~~」

 僕もびっくりしたけれど。

 直斗、本人も驚いたみたいだ。

 どろどろの格好のまま、珍しく、素直に謝って、情けない顔をしている所が。

 今までの『小生意気なシェリーの』クソガキよりも。

『大好きなハニーの』甥に見えて少しは優しい気分になった。

 本当に落ち込んでる、ヤツの頭を『気にすんな』とこずいて。

 さてどうしようか、と考える。