男の所に、嫁に来た、僕なんて。

 こんな田舎の街では。

 多分、今まで見たことが無い人種だろうに。

 毎日の挨拶は、してくれるし。

 何かと気にかけてくれるから。

 僕も、出来る範囲で、手伝いをしてるんだ。

 ……例えば。

 こんな祭りの盛り上げ役、とか。

「明日。
 僕は、祭りの最後(トリ)で踊るんだ。
 だから、今日は、その、最終リハーサルに行く。
 指先まできっちり使う踊りだから。
 今日、球遊びなんぞして、突き指するワケには、行かないし。
 リハーサルのスタジオに行くには、祭り会場の真ん中を通るから。
 昼飯のついでに、焼きそばや、綿アメぐらいは、おごってやる。
 わかったか?」

 僕の言葉に、直斗は、大きな目を見開いた。

「螢が踊る!?
 どんなヤツを!?
 それ、志絵里やハインリヒは知ってるの!?」

「……お前、自分の母親まで呼び捨てかよ。
 しょうがないヤツだな」

「ほ~た~る~!」

 僕の箸を持つ方の手の袖をつかもうとする直斗の手をかわし。

 食事を続けながら僕は言った。

「シェリーに話したかどうかは、忘れたけど、ハニーは知ってるよ。
 大体、祭りに出るし」

「ハインリヒも、出るの!?」

「ま、ハニーは、僕と踊るわけじゃないけどな。
 あいつは、自分の菜園で出来た野菜を出して、売るんだと。
 今日は、仕事で行けない分。
 明日は頑張って、売上げを義援金の足しにするんだって張り切ってるよ」

 ハニーが趣味で世話をしている菜園は。

 まるで、自分の勤めている最先端技術の研究所か、農業試験場みたいだけど。

 すごく手をかけた低農薬野菜の評判が良い。

 多分野菜は、あっという間に売り切れる。