「そだ。
 今日は、ハニーもヒマだろ?
 キャッチボールにつきあえよ」

「私も……か?」

 小さな子供の時以来、もうずっとやったことない、と渋るハニーに。

 案外楽しいから一緒にやろうぜ、と請け合って。

 寝室の扉を開ければ、美味そうな飯の匂いがする。

 どうやら今日も、シェリーの作った朝から気合いの入った力作にありつけそうだった。


 ……ささやかだけど、これが今、僕の一番の幸せの形だ。

 僕が守りたかった、風景だった。


 何にも代えがたい『日常』を照らす、朝の陽の光がやけに眩しく。

 僕は、思わず、何度も目を瞬かせていた。

 まるで、涙をこらえるように。









  〈了〉

H23.7.31am2:49

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