事の始まりは、ほんの数十分前のこと。
「あ…わぁっ!」
食堂でトレーを持ったあたしは、歩いて来た男にぶつかった。
オレンジジュースはこぼれ、カレーに入っちゃう惨事。
…それなのに。
「あぁ!?
てめぇっ!どこ見てんだよ!」
「は?」
あたしが怒られる始末。
あたしはトレーを持って歩いていただけじゃん。
前を見てなかったのは、明らかにぶつかった男の方。
それに、手ぶらのあんたと違って、あたしはカレーもジュースも……
明らかに被害者だ。
「ぶつかったのは、前見てなかったからでしょ!?
それに、あたしは被害者!
だからあんたが謝るべきじゃないの?」
「あ゙ぁ?」
「…………っ」
啖呵を切ってから、今ごろ気付く。
何とも怖面な人…
あたしは感情に任せてしまうことが多い。
そして、いつも決まって後悔する。
「ごめんね」
スッとあたし達の間に入って来たのは、なんとも長身の男。
茶色の髪はフワフワしていて、顔だって……
「ゔ…」
……その前に、チャラ男だ。
第二まで開けたシャツから見えるのは、ジャラジャラしたネックレス。
男なのに、指輪もしてる…
この男、気持ち悪い。
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