渋々歩いて辿り着いたのは、山に程近い小川に架かる狭い橋。


川沿いには桜木が立ち並び、今は青い葉を付けている。


千秋らしい待ち合わせ場所のチョイスだ……。


俺等が幼い頃よく遊んでいた場所、桜ヶ橋――。


あの頃の俺等が遊ぶといったら、必ずここだった。


どうせもう誰もいないだろうと思いつつ、だらだらと橋に近づく。


すると、橋の真ん中で一人佇む少女の姿が目に入った。


風に踊る長い栗色の髪、白い帽子に伸びた華奢な腕、ふわりとなびく桜色のスカート。


川の水面の煌めきも、眩しく光る青い葉も、彼女がいることで、昔の色を取り戻すのは何故だろう……?