チケットに記されている開場時間より約30分遅れてからやっと、扉が開かれた。1階アリーナ席。看板とパイプ椅子に書かれている番号とチケットに書かれている座席番号と視線を交互に照らし合わせながら席を探す。え?可笑しくないか?どんどんと前に進んで行く。辿り着いた場所はYU-A側の最前列だった。座席の前には最前列の特権でも有る柵が立っている。此処にしがみつけば思う存分ヘドバンが出来るではないか!勿論今まで最前列の経験など無かったし、掴まる所など無いからジャンプしたり手を挙げたりする事しか出来なかった。5万5千人の中で、この最前列の席が当選するなんて、一体どれ位の確率だろう。しかも終幕のライブで。信じられ無くて席を間違えていないか何度もチケットと座席番号を確認してしまう。何度も何度も見ても間違いでは無く夢では無い事だと分かると私は、
「うそー!義則すごいよ!最前だよ!!」
興奮して大きな声を出した。それを少し後ろで聞いていた誰かが、どうせダフ屋で買ったんでしょ。と嫌味を言っている。ふん。僻んでいるだけでしょう。私は真っ当なファンなので、ダフ屋でチケットを買ってメンバーが悲しむ様な事は、しないっての。勝手に言っていれば良い。座席を探して、皆の前をすり抜けて、どんどん前に進む優越感が、とても気持ちが良い。この時ばかりは、人の目を気にせず、もっと私を見るが良いと思った。リードギターのYU-A側。私は、もう1人のギタリストRAIが大好きだけれど最前列で大満足だ。