それから、義則は魚臭い。いつも魚臭い。私は魚が嫌いだ。どこが美味しいのか分からない。魚の油が不味いし、骨が邪魔で食べづらいし、生ゴミを処理する時、骨が指に刺さるし、見た目も気持ちが悪い。鮮魚売り場を通るだけで生臭い臭いが鼻を刺激されて不愉快になる。
魚が嫌いで義則が嫌いで魚臭い義則が嫌いだ。

義則は、私の鼻を刺激する鮮魚売り場で働いている。身体と手に魚の臭いが染み付いて取れない。
私が魚嫌いなのを知っているのに、自慢げに、これ俺専用の包丁。と色々な魚を殺して来た鋭利な刃物を見せ付けて来る。
フランクフルト様とか私が数々の食物を口にしておいて言うのも、どうかしているけれど、魚さん、可哀想にと思う。
魚は嫌いだけど、もっと嫌いな義則に捌かれて可哀想に。

その魚の染み付いた身体と手で私を抱かないで。 私が身体に付けたデオドラントスプレーの甘い香りに気が付いているのに、私の身体に舌を這わせた途端、苦い!って嫌な顔をしないで。
私は抱かれていなくてもいつでもあなたの、その魚の臭いを嗅がざるを得ないのだから。

私まで魚の臭いが移るかもしれないじゃない。