――ドンドンドンッ!



 少し荒いめのノックが、部屋に響く。近くにいた隼人がドアを開ければ、その人物は、許可もなしに部屋に乗り込んで来た。



 「梶原! アンタ何かしたでしょ!?」



 やって来たのは……藤原だった。
 とりあえず周りに迷惑だからと言い、一旦落ち着くように宥める。
 目の前に座ると、藤原は説明しろといわんばかりの態度で、オレを睨んでいた。

 「で、何したの?」

 「別に。つーか、お前は何を知りたいんだ?」

 「アンタが何考えてるかよ! 弁当まで用意させて……ただの気まぐれだったら、関わらないでくれる?!」

 いつになく怒った様子の藤原に、本気なんだなということが窺える。

 「あぁ、気まぐれだよ」

 「だったらっ!」

 「けど、それは最初だけだ。――今は、多分違う」

 「多分って……ちょっと、アンタまさか」

 「…………」

 「「うわっ、顔赤らめた!?」」

 「あ~もう、お前らうるせぇ……」

 二人は声を合わせ、オレをまじまじと見ていた。

 「ちょ、ちょっと。生半可な気持ちだったらやめてくれる!? 真白がそこいらの女子と違うってだけで相手してるなら、本当~にやめて!」

 あいつに何があるのか知らない。
 でも、それを知ったからと言って、態度を変えるつもりはない。
 それに……あいつをどーにかしていいのは、オレだけの特権なんだよ。

 「別にいいだろう。――それに」

 「? それに、何よ」

 「誰が誰を好きになろうと……そんなこと、自由だろう?」

 「っ!……それは、そうだけど」

 今の言葉は、藤原にはキツいだろうな。
 けど、これは当たり前のことだし、藤原にとっても、考えなければいけないことだ。――ま、それは隼人にも当てはまるけど。



 「つーことで……レクの時、二人きりにしてくれ」



 その発言に、藤原は真っ向から反論する。けどオレは、そんなのお構いなしに、藤原を部屋から追い出した。

 「あ~あ。紫乃ちゃん、絶対怒ってるよ?」

 「いいんだよ。つーかお前の方こそなんとかしろ」

 「ははっ。それ言われたらキツいって」

 笑いながら言うものの、痛いところをつかれたというふうな表情を隼人は浮かべていた。
 ったく、こっちのことよりも、本当にまず自分のことをすればいいだろうに。

 「ま、オレのことはひとまず置いといて――」

 ニヤリ、隼人は怪しい笑みを浮かべる。

 「志貴がどこまで本気なのか、見物だね」

 見物ってなぁ……。

 「お前の方が、オレは見物だ」

 最近落ち着きがないってこと、知ってるからな。
 にしても、そこまで堪えれる方法があるなら(セフレを作る以外で)、今度聞いてみるか。

 ◇◆◇◆◇

 レクリエーションも無事(私にとっては色々あったけど)終わり、施設へ帰ると、次は会議の時間。まだモヤモヤとした気分ではあったけど、きちんとしなければという思いで、会議に集中していた。
 議題は、来月に行なわれる体育祭について。
 役割や種目を今日と明日で決めることになっていて、この時間は、一通り意見をまとめるだけになっていた。



 「では、残りは明日に回しましょう。お疲れ様です」



 会長の挨拶で締めくくられ、会議は終了。
 私はまとめていたノートを片付けると、一人急いで、部屋へと戻っていた。



 「……わからないよ」



 ベッドにうつ伏せになり、ため息をはく。
 先輩が何を考えているのか、本当にわからなくて。
 意地悪でしたのかとか。
 罰ゲーム的なノリで、本当は嫌々やっているのかとか――。
 考えれば考えるほど、悪い考えが浮かんでしまう。