どうして……こんなことになってしまったのか。



 私は今、壁際に追い込まれています。
 相手は差し詰め、ネズミを狩る猫……いや、ライオンとかトラの方がしっくりくるかもしれないけど――とにかく、逃げられない状況なんです!



 事の始まりは……今朝のこと。



 たまたまその日、日直の仕事があり早く登校したのが、悲劇の始まり。職員室へと向かい、先生から日誌を貰うだけの、ごくありふれた日常なのに。
 まさかこの後の言葉が、私をあの状況へと導くことになるなんて。



 「――望月(もちづき)、ついでに頼まれてくれないか?」



 箱に入れられた資料を指し、先生は言う。それに頷くと、先生はサンキュ~と、明るい返事を返した。

 「これ、教室にですか?」

 「いんや、生徒会室に運んでくれ。鍵はさっき会長が開けてたから、適当に机の上に置いてくれればいいぞ。ほいよ、あんま重くないけど大丈夫か?」

 「はい、これぐらいなら。――失礼しました」

 資料の入った箱を持ち、職員室の上にある生徒会室へと向かう。あまり入る機会のない場所だからか、なんだか変に緊張する。
 ドアの前に立つと、一応はと思いノックをした。

 「――――?」

 でも返事はなくて、閉められてしまったかなぁと思いドアに触れてみると……意外にも、ドアはあっさり開いてくれた。



 『――志貴(しき)くん』



 すんなりと戻っていれば……こんなことにならなかったのに。