「文恵さんの緊張がナビに伝染っちゃったのかな、こんな速度で海を走れる車なんて、MI6のスパイしか持ってない」


「あはは、本当だ。海を走ってるぅ」


文恵は画面を指差して笑った。それですっかり緊張が取れ、その後の予定をのびのびと楽しむことが出来たのだ。


「もう食べられないっ、ごちそうさま。文恵さんももっと食べれば良かったのに。具合でも悪いの?」


折角の豪華な料理にあまり箸を付けていない彼女へ、そう問い掛けた。


「だって……お腹の膨れたオオカミがお布団で寝てたら、興醒めでしょ?」


私は堪らず文恵を抱き締めた。