「あ、貴方……あれ」


少し先の車道に、病人を乗せたストレッチャーが走っている。しかも誰が押している訳でもないのに、車と同じ速度でだ。


「どういうことだ、何が起こってる!」


「怖いっ! 貴方怖いわっ!」


文恵は青い顔で私に縋り付く。その後ろ、窓の外を頭の無い自転車に乗った人が追い越していく。


車列が更にスピードを落とし、早歩き位にノロノロ進み出した時だった。


「貴方……」


「文恵……」


そこには、満身創痍で半死半生の人々の集団が、歩道をふらふらと進んでいた。