「ど、どうしたんだ、一体……?!」


「と、隣の車!」


彼女が震えながら指差す先に見える車内には、顔が真っ赤になった男が運転席に居た。


「え……ええっ?」


怒りとか酒に酔ってとかではない。その顔は血に依って赤く染められていたのだ。


「なんだ?!」


追い越しざまに振り返ると、その車のフロントガラスは真っ白にひび割れ、蜘蛛の巣のようになっている。


『ポーン。暫く道なりです』


思い出したようにナビは音声案内をするが、それどころではない。あの車は前が見えているのだろうか。