「貰い事故なんか勘弁だ」


私はいずれ現れるだろう事故車に対処するべく身構えた。


「……、……?」


しかしいつまで経っても事故車も事故現場も現れない。


「いくらスピードが遅いとはいっても……変ねぇ……」


文恵は頻りに首を傾げているが、わたしこそキツネにつままれた気分だったのだ。


何故なら。


さっき後ろでスクラップと成り果てた車がその形のまま、流れに乗って走っていたからだ。


すると突然。


「キャァァァァアッ!」


文恵が金切り声を上げた。