いけない。
歳が上だからといって偉そうな態度は取るまいと、いつも自戒してきたつもりだったのに、つい勢いに委せて頭ごなしにものを言ってしまった。
可哀想に妻の文恵はその小さな身体を更に萎縮させて、所在なさげに俯いている。
「ああっ、ゴメン! 私が悪かった」
それでも直ぐ様謝ることが出来たのが幸いして、文恵がしくしく泣き出す最悪の事態は何とか回避することが出来たのだ。
「ううん。折角のお休みに余計なことを言い出した私もいけなかったの。
だからおあいこねっ」
彼女は、風にそよぐスミレのように身体を左右に傾けながら微笑んだ。