『ポーン。およそ300m先、右方向です。その後(アト)道なりです』
もうじき見えてくる筈の道路、そこに光は無かった。
「曇ってるのかしら、随分暗いわね」
「そうだな。まるで夜みたいだ」
信号で停まり、そのまま合流した幹線道路の空はどんよりと暗く垂れ下がっている。
私達は、何か得体の知れない居心地悪さを覚えながら車の流れに乗っていた。
「渋滞もしていないのに、何だか車のスピードが遅いな」
「田舎道だから、みんな安全運転なのよ」
普通は逆ではないか? と口から出そうになる言葉を飲み込んで、私はハンドルを握り直した。