「貴方。……ねえ貴方、目的地」


「ああ、そうだった」


私はタッチパネルを操作して目的のリゾートホテルを呼び出し、決定ボタンを押した。


『……されました。……実際の交通ルールに従って……』


「ホントこのナビは堅苦しいな。私まで緊張してくるよ」


「フフフ。変なの」


元々『緊張する』とは自分が言い出した言葉だ。なのに文恵はもう柔和な笑みを浮かべて、進行方向に向き直っている。


「はいはい、サッサと出発すればいいんでしょ?」


彼女の無言の要求にわざわざ声を出して応えると、私はアクセルを踏んだ。