(気付くの、遅すぎ)



「さっきソイツに襲われてた子。……さて、記憶はどうするか」


(人に見られたら記憶をいじるようにとは言われてる。

 ……でも、正直めんどくさいんだよなぁ)



 明らかな人選ミスをしてしまったことを、元老院長はいつ気づくだろうか。


 星鈴と鷹は少年の方をじっと見つめた。


 自分の身が危険だと思ったのか、少年は慌てて口を開いた。



「こ、このことは誰にも言いません!」



 少年が向けてくる瞳は、誠実さに満ちている。
 

 嘘はついていない。


 綺麗で純粋な瞳。


 星鈴としても、信用に足る人物を見る目は十分養っているつもりだ。


 今回も自分の直感が大丈夫だと告げていた。


 ……決して、やけっぱちになったわけでも、手間を(はぶ)こうとしたわけでもない。