扉の開く音がして扉の方を振り返った。
帽子を目深に被りサングラスをかけた長身の彼はまるでモデルのような容姿だった。

「わりぃ…遅くなった。」

そう言いながら帽子とサングラスを取った彼はあの時の彼だった。

彼と目が合った瞬間胸が苦しくなり時が止まったようだった。

「あれ?君あんときの?えーと…」

『アロマです…間宮アロマ』

「そうそう!!アロマちゃん。あの時はごめんね?お尻大丈夫だった?傷になってない?激しくぶつかっちゃったから痛かったよね?」

『大丈夫です。』

あの時の彼の雰囲気と今この瞬間の彼の雰囲気が違うことに正直戸惑った。
あの時の彼は人を引き付けるんだけど‘近づいたら危険’そんな感じな雰囲気だった。
今の彼はあの時の彼とは別人って思わせるくらい雰囲気が違った。

「大翔…お前アロマと知り合いだったのか?てか一体アロマに何したんだ?お尻って…お前そんな趣味が??」

「あ?」
『え?』

私はさっきの彼のセリフを思い出した。

「そうそう!!アロマちゃん。あの時はごめんね?お尻大丈夫だった?傷になってない?激しくぶつかっちゃったから痛かったよね?」



ボンって言う効果音が似合うくらいに一気に顔が真っ赤になった。

『ちちちちち違うの!!た、ただ前に繁華街歩いてる時にぶつかって尻餅ついちゃっただけなの!!』

「アロマ顔真っ赤!!かっわいい」

『美野里!!』

そんな感じでみんなと楽しく笑って話してる間ユージが悲しい顔してたなんて気づきもしなかった。

あの時既に私の気持ちに気づいてたんだね??

ごめんね…
ユージの気持ちに気づきもしなかったよ。



ただ、あの時は楽しくて仕方がなかった。


暗闇の世界に一筋の光が見えた気がしたんだ。

その光を掴みたくて周りを見ずにただ闇雲に走ってた。

私の後ろを必死に守ってくれていたなんてあの時の私は必死過ぎて分からなかった。