そこにいたのは
浅葱色の羽織を羽織った、長い髪を高い所で一つに纏めた美丈夫。
百人女がいたら、九十九人が振り返るであろう。
しかし、
(誰?この人。)
楓は残りの一人だった。
「おい女。」
「…え?」
考えにふけっていると、男二人はいつの間にか逃げていた。
よって、裏路地にいるのは、楓と美丈夫だけ。
「お前、見たことねぇ着物着てやがるな。」
「……そうですね。」
「…怪しいな。」
「……そうですね。」
「ちょっと話を聞く。ついて来い。」
「いいともー。……なんて言うワケないですサヨナラ。」
楓は民家の屋根に飛び乗り
ピョンピョンと屋根から屋根へと移動して逃走した。