先ほどの土方の手を思いだし、少しほんわかした気持ちでいると
「…なぁ、嬢ちゃん。」
と、原田が口を開いた。
「何ですか?」
「嬢ちゃんは、いいのか?」
「何が、ですか?」
原田は頭をガリガリと掻いて、再び口を開く。
「…嬢ちゃんは、平助との試合を見る限り、軽業を武器にする。」
だんだん、楓にも、原田の言いたいことが分かってきた。
「…そうですね。」
「辛くねぇか?軽業が好きなんだろ?」
その言葉に、楓は頷く。
「軽業は、好きです。でもですね、それ以上に此処が好きです。」
楓はそう言って、みんなを見渡す。
―――仲間なんだ。
さっきの土方の言葉を思い出す。
「だから、一緒に戦いたいと思ったんです。仲間を…守りたいと思ったんです。」
まぁ、私が守れるのは無いに等しいかもしれませんが…。
と、俯きながら付け足すと
「…合格だ。嬢ちゃん。」
原田の優しい声が聞こえた。