「してない、けど」

「雄紀さ、なんであんな事したの？」


あんな事。

確かにそうだ。
そういえば、この人に目撃されたんだった。


「…わかんね」

「雄紀、楓ちゃんなお前が思ってる以上にお前が好きなんだぞ」


匡史さんは普段、幼稚園児を相手にしているせいか俺らにまでたまに四歳児くらいにちょうど良い、先生口調になる。


「ねぇ、雄紀…今、電話してみたら？」

「今？」


俺が眉をひそめて返事をすると、亜也に胸ぐらを掴まれた。


「男だろ。楓ちゃん悲しませてんじゃねぇよ」


そういえば、祥太が亜也と付き合ってるときこのキャラが好きで付き合ってるって言ってた気がする。


「うん」

「雄紀、電話」

「してみる…」


携帯を取り出したとき、どうやって場所が分かったのか祥太も合流していた。



電話は何回かコールされ、急にブツッという鈍い音が聞こえた。


『…もしもし』

『あ、楓子？』

『うん』

『学校、来ないの？』

『…』

『楓子に話が、あるから』

『今日、うち来て』

『分かった』