∽真優花の過去2∽


2年になって

美鈴とは
別のクラスになり

恵方堂くんと
同じクラスになった。

それでも、美鈴とは
相変わらず仲良しだった。



ある日の放課後…

その日は、いつもより
帰りが少し遅くなり


1人で廊下を歩いていた。


『相澤さん』

聞き慣れた声に
振り返ると


恵方堂くんがいた。


『今、帰り?』


「うん」


『あのさ…

ちょっと…美鈴のことで
相談があるんだけど』


「あ…あたしに?」


『うん。相澤さんは
美鈴の親友だろ?

少しだけだから…
相談にのってくれない?』

あたしなんかで
大丈夫かな…?

自信は無かったけど

彼の優しげで真剣な表情に

断ることができなくて…


「何も、できないかもしれないけど…」


『ありがとう』


そうして彼は
あたしを連れて

校舎の
端の方に、ぽつんとある
教室に入った


教室の中は

カーテンが閉め切ってあるため、少し薄暗くて

とても静かだった。


見回すと

机や椅子の他に

機材っぽい物や
色々な道具が揃っていた。

さらに
隅に置かれた本棚には
本がたくさん並んでいる。


「ここって…
確か、物理室だよね?
あたし…初めて入った」


『そうだよ。
俺らの部室なんだ。

今日は部活休みだから
誰も来ないし。

ここで実験もやるから
壁は防音だしね。

奥には暗室もあるよ』


彼は
指先で壁をなぞりながら言った。


「そうなんだー!
すっごい充実してるね?」


『まあね。
ここなら、静かだから…
ゆっくり話せるよ。』


彼に促され…あたしは

教室の真ん中付近の椅子に
座った。


『オレンジでいい?』


「え…あ…いいの?」


『うん。
ここ、冷蔵庫もあるんだよね。

飲料用じゃないけど、
みんなこっそり使ってるんだ』


そう言って
ジュースを差し出す
彼の笑顔に

あたしも笑顔を返しながら

オレンジジュースを口にした…