彼の、斜め後ろを歩く
あたしは

繋いでいた彼の手を

両手でギュッと握った。


「悠斗…待って!」


そう言って
彼の腕を軽く引っ張る…


「んっ?どうしたー?」


「あの…帰る前に…

どうしても

悠斗に聞いてもらいたい
話があるの」


彼は

少し考えてから、言った。


「それって…

その…

さっき、俺が言った事
気にしてるんだったら…」


「違うの!」


あたしは、彼の腕を


両手でしっかり掴んだまま
言った。


「本当は…ずっと悠斗に
聞いてほしかったの。

今まで言えなかったのは

あたし自身…
まだ、不安だから…


本当に、過去の…

全部終わった話だって

言いきれるのか
わからなくて…」


言いながら

自分の体が

少し
震えているのがわかった。


彼は、片方の手で

あたしの頭を
優しく撫でる…


「俺に話せば…

少しは…楽になる?」


「別に、あたし
楽になりたいわけじゃ…」


「それはわかってるよ。

俺が聞きたいのは

その…無理に…
話すわけじゃないのか?

ってこと。


真優花の
気持ちの整理が

もっと、ちゃんと
ついてからでも…」


あたしは

彼の目を
じっと見つめて…

ゆっくり首を振った。


「そっか…

それじゃ、
聞かせてもらおうかな?」


彼は、優しく微笑むと

ちょっぴり冷たくなった
あたしの頬を

指で、そっと擦った。


「とりあえず…外、寒いし

温かいものでも飲みながら
話そっか?」



そして、あたし達は…

近くのコーヒーショップに
入った。