ゆっくり顔を上げると
彼の
少し寂しそうな横顔が
見えた…
「…ゆう…」
声をかけようとした時
ふいに彼が
こっちを向いた。
「あのさ…
そろそろ…帰ろっか?」
「え…?」
「初デートから、あんまり
帰るの遅くなったら…
真優花の両親も
心配だろうしさっ!
ほら、行こう?」
そう言って彼は、あたしに
いつもの笑顔で
手を差し出した。
「うん…」
あたしは、その手を握り
引っ張ってもらいながら
トンネルから出て
立ち上がる。
そして、無言のまま
ゆっくりと歩き出した彼に
手を引かれながら
歩き始めた。
さっき…
彼に抱っこされて来た
この道を
時折、風に吹かれながら
戻って行く
2人の足音を聞きながら…
あたしは自分に問い掛けてみた。
このまま…帰っていいの?
悠斗は、ちゃんと正直に
過去の事…
話してくれた。
今度は
真優花が話す番じゃない?
そう…
もうひとりの自分が
言った気がした…