「じゃ…俺の事好き?」
「え?」
彼が、いきなり
そんな事聞くから…
あたしは
持っていたフォークを
落としそうになった…
彼は
微笑んだままで
あたしの目を
じっと見つめている。
あたしが答えるまで…
視線を逸らすつもりは
ないらしい…
あたしは
真っ赤になりながら
コクリと頷いた。
でも…
彼は相変わらず
微笑んだまま
あたしを見つめている。
「ちゃんと
言ってくれないと…
わからないなーっ?」
「え…」
あたしの顔は
ますます赤くなり
胸のドキドキが
どんどん加速していく…
あたしは
俯き気味になり
小さく…
呟くように言った。
「好き…だよ…?」
「…誰がー?」
「意地悪…」
からかうように
聞いてくる彼…
あたしは
開き直って
顔を上げると
彼の顔を見据え
口を開いた。
「わ…あっと…
ゆ…悠斗が好きなのっ!」
何故か
その時に限って
店内を流れる音楽も
みんなの話し声も
一瞬止まり…
お店の中が
シーンと静まり返っていて
ついムキになってしまった
あたしの声だけが
店中に響き渡った…
「…っ!?」
自分でも驚いて
咄嗟に両手で
唇を覆った、あたしを…
カウンターにいた
お客さんも
店長も奥さんも
そして千鶴ちゃんも…
みんなが一斉に見た。
更にその全員が
面白い程
まったく同じ反応だった。
最初、
驚いたように振り向き
それから誰もが
にっこり微笑みながら
お互いに
顔を見合わせていた…
恥ずかしくて…
ひたすら恥ずかしくて…
唇に当てていた手の平で
自分の
熱くなった頬を覆った。