「真優花…?」

呼び掛けられても
何の反応も示さない
あたしは…

過去の苦い思い出の中を
ひとり彷徨いながら

小さく震えていた…


そんなあたしの手を
しっかりと握って

片方の手であたしの肩を
揺さぶる彼…


「真優花っ!?」


ビクッ

「え…?」

ハッとして見ると

心配そうに覗き込む
彼の顔があった…

「大丈夫?顔色悪いよ…」


「あ…ごめん…あたし…」


「いや…
俺が変な事聞いたから…」

彼は小さくため息をついて
続けた…


「…ひとつだけ…
確認しておきたかったんだ

真優花は…そいつに
未練が…あるの?」


「無いよ!絶対無い…」

あたしは、何度も
首を振りながら言った。


「わかった。ごめんな…

もう
思い出さなくていいから…

これからは
俺の事だけ、考えてよ…」


彼の優しい言葉と笑顔に
甘えていたい…

このまま
和野くんの事だけを
考えて生きていけたら

幸せなんだろうな…


でも…

そんなことが本当に

可能なんだろうか…?


あたしの心は
不安でいっぱいだった



「もう授業終わるな…
そろそろ戻ろうか?」


「うん…」


2人は立ち上がった。


「相澤さん」


「んっ?」


呼ばれて振り向くと

突然、笑い出す和野くん…


「えっ?なに?
何で笑ってんのーっ??」


いつまでも笑ってる
和野くんに

ちょっぴりムッとして
睨んでいたら


「ふくれんなよーっ!
真優花が悪いんだろ?」


「…どうして?」


「だってさ…

相澤さん

って呼ぶ方が、すんなり
返事するんだもん…」


「あっ…だって…
まだ…慣れてないから…」


彼はフッと笑って言った。

「早く慣れてね?
まーゆかっ!」


「ん…」


「それから…

俺は…真優花が好きだから
真優花の事、守りたいし
全部受け止めたいって
思ってる…

それだけは絶対に
忘れないでほしい」