建物から降りて
重い鉄の扉から
校舎に戻ったあたし達は
階段の一番上に
並んで座った。
和野くんの手は
まだ
あたしの手を握ったままで
あたしはずっと
ドキドキ…クラクラ…
しっ放しだった。
「あの…和野くん…」
「ん?」
あたしには
さっきから、どうしても
気になってる事があった…
「あの…
さっき…言ってたでしょ?
過去の…痛い思い出って…
それって…和野くんの
過去の恋愛の話…
なんだよね?」
「うん……聞きたい?」
「そうじゃなくて…
聞きたいとは思うけど…
今、あたしが知りたいのは
その…相手の人には
未練とか…全く無いの?」
「無いよ。
もう終わった事だし!
て、ゆーか…あれは正直…
恋なんて呼べるものじゃ
なかったかもなー…」
「…その人とは…
どうして…別れたの?」
「んー…
色々あったんだけどね
一番の原因は
彼女が浮気したから…?
…いや、違うな…
自分が、彼女を愛してない
って…気付いたから…
うん、これだな!」
「…冷めちゃったの…?」
「と言うより…
もともと…流されてたって
感じだったから…
言い訳にならないけど
あの頃は、ガキだったから
背伸びもしたかったし…
初めての恋愛ごっこに…
夢中になってただけ
だったのかもなー…」
彼は笑って言ったけど
その横顔は
少しだけ…
悲しそうに見えた…
「真優花は?」
「えっ!?」
慣れない呼び方に
またビクッと反応する
あたしを見て
彼はクスクス笑った。
「そんなに
いちいち驚かれると
呼びにくいじゃん!」
「あ…ごめんなさい…」
「真優花が言ってた…
恋愛の嫌な思い出って
…元カレとの事?」
しばらくしてから
頷いた…あたしの記憶は
少しずつ
過去に遡り始めて…
無意識に
繋がれた手をギュッと
握り締めていた…