「和野くんが良ければ…
また、いつでも来るよ…」


「よろしく…」


そう言いながら

洗い物を終えたあたしに
タオルを貸してくれた



「ありがと…

あのね…お母さんの具合…
どう…かな?」



「ああ…今のところは
また落ち着いたみたいだ…

様子見なきゃわからない
らしいけど…

こればっかりは考えても
どうしようもないからさ…

…心配してくれて…」



そこまで言った和野くんに

あたしは両手の人さし指を
交差させ × を作って
見せた…



「あ…」


彼は、言うのをやめて


照れくさそうに笑った


そんな彼を見て

あたしも微笑む…




それからあたし達は

和野くんに

担任から頼まれた書類を
しっかりと渡して



帰ることにした



果倫ちゃんと和野くんの

笑顔に手を振って

りっちゃんの家に向かった




薄暗い道を歩きながら


あたしは今日見た

和野くんの

色んな表情を


思い出していた…



そして


和野くんの言葉


ひとつひとつを


頭の中に浮かばせる…



今まで知らなかった


和野くんの事…


たくさん見る事ができた




今日は


和野くんに

少しだけ


近付けたような気がする…



なんだか嬉しくて


あたしは無意識のうちに


鼻歌なんて歌ってしまった


それに気付いた2人が


こっそり目を合わせて
微笑んでいた事も知らずに


ひとりの世界に…



入り込んでたみたい…