最初の印象通り、彼女の柔らかい
優しげな雰囲気は変わらずとも、

問題は…嫉妬深いとこだった。



特に百合と僕との関係。



大抵のことは譲歩したり
相手に合わせたりする僕でも


どうしても譲れない事があった。



7月7日の七夕祭り。



うちの大学では、毎年
7月7日に七夕祭を開催してる。



他大学からも人が集まる程有名で、

大学にある七夕の木に
虹色の短冊をつけると結ばれる
というありきたりなイベントだった。




去年のこの日に
陽太は死んだんだ。




僕はこの日はどうしても
彼女のそばにいたかった。




何をするわけでもないけど
独りにさせたくなかった。




…とはいえ、

恋人のイベントに参加できないかつ、
他の女、しかも百合と一緒に過ごすことを、

当然僕の彼女が許す訳もなく…



苦肉の策でついた嘘が



たった今バレた…。





『そう!

バイトの代打頼まれてさぁ、』



僕の彼女は僕を覗きこむように
じっと目を見て



『そっかぁ…

林くんでしょ?

体調が悪いとか?』



僕は正直嘘が上手くない。

あまりつくことはないけど
つくときはいつも、たぶんぎこちない。


うしろめたさと、申し訳なさが
交互にテロップのように顔に流れる。


なるべく平静を装って
彼女を見ないように見た。



『そうみたいなんだよね…

急に代わって欲しいって
ゆーからさぁ』



チラッと彼女を見ると
バッチリ目が合って、すると

彼女は僕の肩よりちょっと上
くらいを指差した。


僕は思わず指の方向に
目を向けると


…林の姿が目に入った。



僕の後方少し離れたところで
友達と元気に騒いでいた。



…こんな
コントのような展開って。。。



僕は恐る恐る
彼女の方に向きなおってみると




『…林くん、

元気そうだけど?』



…怒ってる。



他に誤魔化しようなら
いくらでもあるかもしれないのに

僕はそれが限界だったようだ。


彼女の殺気にも似た空気と
不本意にも最速でバレた嘘に動揺していた。



黙ってうろたえてる僕をみて
彼女はにっこりと笑って言った。




『どーゆーことか説明して?』





…”笑ってるのに、笑ってない”
ってこーゆーことを言うんだな。。。