僕は自分のマンションに着くと
ドアの前に誰かがしゃがみ込んでるのに気づき

気づくと無意識に駆け寄っていた。



…アキ……



僕は抱きしめたい衝動を抑え、

アキに手を差しのべて立ちあがらせた。



小さい彼女は僕の胸につくかつかないか
くらいの距離に顔があった。




いつもの彼女の甘い香水が
今日は控えめに香っていた。




頑なに顔を上げない彼女に




『…メール…見てくれたんだ…』




僕ははやる気持ちを抑え
静かに言った。





『……あ!えっ?!

ごめん!気づかなくて…!』




びっくりした顔をして上を向く

アキとやっと目が合った。





会わずにいたのは1日なのに





まるで何年も会っていなかったような気分だ。





『…私…やっぱり会いたくて…』






そう言われた瞬間に
僕は気持ちを抑えられずに

力一杯抱き締めていた。





…………同じ気持ちでいたんだ






彼女を抱きしめる手は
その感覚を覚えていて

僕は抱きしめる僕の手が
幸せを感じてるのがわかった。





やっぱりアキが好きだ…






すごく遠回りをして
君を傷つけてばかりだったけど

君が大事たということが
はっきりわかったんだ。






もっと抱き締めていたかったけれど

僕はきちんとアキに
言わなければいけないことがある。






僕の手は名残惜しそうに

彼女を手放した。